それは、ひどく危うげな




「竹中さん、これどうします?」
「あ、千切りにしてアク抜いといて」
「わかりました」
「竹中さん、これはー?」
「……えーっと」




 私そんなもの用意したっけと考えていると、「ナマコなんかどこから持ってきたんですか太子」とイナフが呆れ声で言った。太子は残念そうに唇をとがらせ、掴んでいた生物をジャージのポケットにしまう。そんな砂とか入ってるところにしまっておいたものを料理に使おうとしないでほしい。




「痛ッ」
「切った? 大丈夫?」
「あーはい、そんなに深くないみたい」
「貸せ妹子、舐めてやる」
「刺しますよ」
「それなら風呂場にしてくれ、ここじゃ後始末が面倒だ」
「ちょ、竹中さんが言うと冗談に聞こえないから! 怖!」




 喉の奥で笑う。
 イナフもおかしそうに笑い出して、太子も困ったようにへらりとした。




「ほら太子、味見」
「ん、うまい」
「皿これでいいですか?」
「ああ、あとそっちの青いやつも」
「はいはい」







 今が幸福すぎるのも、このままではいられないのも、妥協点なんてどこまで行ったってみつからないのも、私たちは知っていた。
 それはさながら、薄氷の上に手をつないで立つような





(落ちるときは、みんな一緒だ)