壁際にもたれ、ずるずるとへたり込んだ。ひどく息苦しく、身体に力が入らなかった。指先や爪先、後頭部の異形、末端は麻痺していた。くらくらして視界がぼやけて、震えが止まらなかった。寒いと云うのはきっとこういうことなのだろう、と思った。 頭上は窓。夜更けには月明かり、そっと影を落とす。その光は白く、つめたかった。自分はそんなことも知らなかったのだと、わらおうとしてもできない。うまく筋肉が動かせない。 意識は朦朧としはじめていた。世界が明滅する。自分が消えかかっているのがわかる。それでも消えはしないのだ、と云うことも。 (くだらない、) 自分が不完全なものであることなど承知している。それはヒトにあらざる自分のみならず、花とて虫とて、ヒトとて同じことだ。ただそれらと自分との決定的な違いは、自分はなにを知らなくとも自分の終わりかただけは確実に悟っていると云うことだ。 今はまだ、終わるべきときではない。そんなことは思考の端に上らせることすら無意味だ。自嘲しながら、ゆるゆると目を閉じる。まぶたの裏には輪廻を模す、つめたい光。 「……かさ………けなか……」 たけなかさん。 耳に入るそれは、ああ、私の名だ。 そう思って、鉛のように重いまぶたをこじ開けた。がくりと首を垂れた視線の先には、ひと目でそれとわかるほどの上質な織物でつくられた衣が艶やかに床を彩っていた。最近は冷えるから、彼もきちんとした衣装をまとっているのだ。摂政かなにかにでも見えますね、とイナフにからかわれ、怒っていたっけ。 私は彼に両肩を掴まれ、揺さぶられていた。何度も何度も名を呼ばれていた。ああ、とても不安げな、夜泣きをするこどものような声をしている。安心させなければ。顔を、あげて。 「……い、し」 声帯はわずかに振動し、微弱な音が喉にからみついた。私は涸れていたのだと、やっと気づく。 力を振り絞って首をもたげると、思いきりぎゅうと抱きすくめられた。目を合わせる間もなかった。 「竹中さん、ごめん、池が、ごめん、私気づかなくて……! すぐに火を、だめだ、そうだ湯だ! 待ってて竹中さん、湯を、今湯をたくさん沸かさせて、」 太子はひどく混乱していた。憔悴していた。いけない、あなたは私のためにそんなに怯えてはいけない。 摂氏36℃の熱を持った彼に抱きしめられ、私の身体は少しずつ、少しだけ、震えがおさまりはじめた。自由のきくようになった腕を、そっと背にまわす。指先の感覚はまだ、ないけれど。 「……いきだよ、たいし」 「でも、だって、竹中さん……!」 「へいきだよ。日が昇れば、じきに溶ける」 こんなことじゃ、私はいなくならないよ。 置いてなんて、いかない。いけやしない。 (それが、さだめ) 私は一度目をつむって、そして開いた。彼の肩越しに見る部屋の中には、まだつめたい光が満ちていた。 私は少し身じろぎして、乾いた唇で彼の首にくちづけ、そしてわらって、ひとつだけ無理を言った。 熱 を、 |