私が彼を愛するのはいけないことだろうか。





「う、あッ……!」
「竹中さん、平気?」


 気づかわしげに伸ばされる手を頬に引き寄せ、にこりと笑む。そこから髪をかきわけて後ろに滑ってゆく手が異形の部分に触れると、その熱さにぞくりとした。


「ひんやりしてる」
「太子の手は、熱いな」
「そうか?」


 ああ、そんな優しい顔なんかしなくていい。
 私は全部あなたのものだから、好きにすればいいよ。あなたがいなければ私は消えてしまうのだから、あなたに殺されるのなら別にかまわない。




「もっと、熱くして」




 私が彼と同化しているという事実は、私と彼が違うものであるという事実以上に残酷なものだ。この行為それ自体が彼の喉笛に剣を突きつけて「あなたは私を愛さなくちゃならないんだよ」と笑うようなことだったとしても、私にはそれ以外の選択肢なんて見えない。存在し得ない。




「竹中さ、私もう」
「ん……太子、一緒に」






 このひとがいつまでもわたしをすきだといってくれればいい。





つめたい鳥籠(太魚)