ガタガタと窓が鳴る。
 午後になっても気温は上がらず、風ばかり強くなっていく。


「すごいな、外」


 熱い茶をすすり、太子はほう、とまるく息を吐いた。肩をすぼめ、手をすり合わせる。


「寒いのか」
「寒い寒い。竹中さんは平気なの?」
「ああ、別に」


 私は温度変化には鈍感だ。うらやましいなコノヤロー、と小突かれ、曖昧に笑う。



 うらやましい、なんて。
私のこの、ひとじゃない証が?



「あ、でもあったかいよ竹中さん」


 太子の手がするりと頬に下りてくる。……冷たい。


「だめだ」
「え?」


 冷えきった手に自分の手を重ねる。熱が逆転している。違う、こんなのは。





「太子は熱くなきゃ、だめだ」





 呟いて、取った手に舌を這わせた。骨をなぞるように舐め上げると、ぴくりと反応する。


「誘ってんの?」
「好きにしてくれ」
「うーわ」


 楽しそうに太子が言って、私たちは指の間でキスをした。太子の舌は貪欲で、たちまちに私のささやかな体温を奪いとってゆく。





 これでいい。熱は、在るべき場所へ還る。
 彼のもとへ。ひとのもとへ。






水曜日の誘惑(太魚)